第16回 英国の現代アート最先端 Are you a ‘Culture Vulture’?
July 2009
英国の公的な国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシルの英語講師が、イギリス文化についてご紹介します!リアルなイギリス情報をお楽しみ下さい。

Written by Philip Patrick (フィリップ・パトリックは
ブリティッシュ・カウンシルの英語講師です)

昨年、現代の英国の創造性を紹介したUK-Japan 2008の一環として開催された展覧会「
英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」に、2つに分断されてガラスケースにホルマリン漬けにされた牛の親子がやってきました。これは、現代美術界で最も重要な賞の1つといわれる英国ターナー賞の受賞作家、デミアン・ハーストの「母と子、分断されて」という独特な作品です。
デミアン・ハーストは、グラフィティーアートなどで有名な芸術家バンクシーや、彫刻家のアントニー・ゴームリーをはじめとする英国の現代アーティストのなかでも、一際目立った存在のアーティストです。ハーストの「母と子、分断されて」は、英国でも賛否両論を集め、日本でも
‘culture vultures (ハゲワシが獲物を狙うように?!カルチャーを愛する人々)’ の注目をあつめました。
今月は、
‘culture vulture’ いうフレーズや、英国の現代アート情報をご紹介します。
‘culture vulture’ とは、映画やコンサート、ギャラリー、展覧会情報誌をチェックすることを日課としているようなアートに熱心で教養のある人たちを指すフレーズで、同韻で2音節の単語をペアにした最近流行の言い回しのひとつです。その他には、‘最高!’ という意味の
‘lovely jubbly’ 、‘魅力的な若いママ’という意味の
‘yummy mummy’ というフレーズも。
そんな
‘culture vulture’ にとって、英国は、魅力にあふれた国です。英国の多くの博物館は入場料が無料で、コンサートや、アートフェスティバル、最先端の野外のパブリック・アートも多く開催されています。彫刻家のアントニー・ゴームリーは、この7月から一般市民にトラファルガー広場の台座の上で1時間ずつ好きなことをさせるプロジェクトを開始します。1日24時間休みなく100日間続く予定です。
その他にも、ターナー賞の受賞者マーク・ウォリンジャーは実物の33倍の巨大な白馬を、ケント州スウォンズクームのユーロスターの駅近くに制作する予定で、完成後はパリに向かう乗客の目を楽しませることでしょう。このプロジェクトは、ゲーツヘッドのA1道路にある、ゴームリーによって制作された「エンジェル・オブ・ザ・ノース(北の天使)」 にちなんで「エンジェル・オブ・ザ・サウス(南の天使)」と呼ばれています。また、リバプールを訪れる旅行者は、ターナー賞にノミネートされた、トレイシー・エミンによる4メートルのブロンズの柱の上に小さな鳥を載せた彫刻「ローマン・スタンダード」を見ることもできます。
英国のアーティスト達は昨今のパブリック・アートで新境地を開いていますが、バークシャー州のアフィントンや、ドーセット州のサーンアバスへの訪問もお薦めです。アフィントンでは有史以前に石灰岩の丘陵地帯に描かれた馬の地上絵を、サーンアバスでは、400年以上前に描かれたとされる棍棒を握った巨大な裸の男の地上絵をみることができます。ちなみに、女性がこの巨人の地上絵の上に一晩中座っていると、子宝を授かる可能性が高くなるとも信じられています。
ハーストの奇抜なインスピレーションは、哺乳類をホルマリン漬けにした作品以外に、ファッショナブルなノッティングヒルに薬局を模してつくった ‘Pharmacy(薬局)’ というレストランでも、発揮されました。レストランは先端スポットとして大人気となりましたが、数年後に閉店。多くの人々が、本物の薬局と間違えて風邪薬や日焼け止めクリーム、コンタクト洗浄液などを求めてやってきたことが原因の一部とも言われています。
聡明なアーティストでも、たまには行き過ぎてしまうことがあるのかもしれませんね。
英国の公的な国際文化交流機関 ブリティッシュ・カウンシル
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