第8回 英国の連続テレビドラマ事情
November 2008
英国の公的な国際文化交流機関ブリティッシュ・カウンシルの英語講師が、イギリス文化についてご紹介します!リアルなイギリス情報をお楽しみ下さい。

英国の家庭では、毎晩のように激しい口論が勃発し、犯罪が繰り広げられ、また驚くべき秘密が次々と明らかになります・・・。
とはいっても、テレビの世界での出来事ですが! 英国の連続テレビドラマ、いわゆる‘ソープ・オペラ’は、50年以上に渡って、悲劇や衝撃を英国の家庭にもたらしてきました。英国人と日本人は、共に連続テレビドラマ好きですが、両国のドラマにはかなり違いがあるようです。

大きな違いの1つは放映期間です。日本では3ヶ月のテレビドラマが主要ですが、英国では視聴者が飽きるまで続きます。英国で最も人気のあるテレビドラマは、1960年から続いている英国テレビ局ITVの‘Coronation Street’ 、通称 ‘Corrie’ 。そのライバルは、1985年から続いている英国放送協会BBCの‘EastEnders’です。俳優も同じ役柄を長い間演じ続け、‘Corrie’ に出演している俳優のウィリアム・ローチは48年間もケン・バーロウという役柄を演じています。1981年にケン・バーロウが結婚した回は、2日後に同チャンネルで放映された英国皇太子チャールズとダイアナ元妃の結婚式よりも高視聴率を記録しました。 また、ドラマの内容も異なります。日本のテレビドラマでは、完璧な装いをしたおしゃれな人々の生活が描かれことが多いですが、英国では、地味でありふれた日常を過ごしている、中高齢者の生活が舞台になります。 ‘Coronation Street‘はマンチェスター、 ‘EastEnders’はイーストロンドンの、決して豊かとはいえない地域の設定です。
なぜ、英国人は現実的なドラマを好むのでしょうか?現実主義であるため、いくら楽しめるものであっても、明らかに豪華過ぎ、表面的なものを受け入れることが苦手だということがあるかもしれません。もし、英国人が日本のトレンディドラマをみたら、登場人物の収入に不釣合いにおしゃれな家や、場面毎に変わる衣装といった、ドラマの真実性に色々と疑問を抱いてしまうでしょう。

‘Coronation Street‘に登場する有名な住人は、常にエプロンをつけ、髪の毛はカーラーに巻いたままいう出で立ちの清掃婦の母親ヒルダを中心としたオグデン一家です。息子はゴミ収集人、主人は無職。ほとんどのシーンは、小さな家の台所にある揚げ物オンリーの食卓を囲んで展開します。そんなドラマの登場人物、ヒルダはロイヤルファミリーの次に英国で最も有名な女性に選ばれ、彼女のお葬式の回は、なんと英国人口の約半分、2,700万人もの人が視聴しました。
一方、文化人類学者のケート・フォックスは、英国人がおとぎ話のような豪華な設定よりも現実性を好む理由として、英国人気質を挙げています。彼女によると、英国人はお互いのプライバシーを大切にするため、相手のプライベートに踏み込むことはしません。そこで、お隣の生活を覗いてみたいという本能的な欲求を、連続テレビドラマで満たしているのではないかと・・・。
また、これらのドラマには、地域独特のアクセントや方言が満載。外国人にとって、理解することは大変です。でも、英国滞在中に機会があれば是非、チャンネルを回してみては如何でしょう?日常英会話のリズムや抑揚の付け方を知り、実用的で自然な表現を発見できます。その上、EastEndersのプロデューサー、ジュリア・スミスが「ドラマのために生活を創作するのではなく、ドラマに実生活を反映している。」と言っているように、真の英国社会を垣間見ることもできるでしょう。
著作者 Philip Patrick (フィリップ・パトリックは
ブリティッシュ・カウンシルの英語講師です)