第3回 ボートでゆっくり旅する
August 2009
暖かくなると誰もが集いたくなる水辺のスポット。
それはイギリスでも例外ではありません。
「英国運河の旅」などの著者である秋山岳志さんが、水辺を楽しむイギリスの魅力を3回にわたり、ご紹介します。

イギリスの水辺を楽しむ方法で、究極の贅沢とも言えるものが、船の中で寝泊りしながらゆっくりと旅するスタイルです。
ご家族や友人同士なら、船を1艘借り切ってしまうのがおすすめ。キャビン(船室)にベッド、リビング、キッチンからトイレ、シャワーまで付いている「ハウスボート」は、イギリス各地にあります。船長はもちろんあなた。イギリスの川、運河では船舶免許や経験は不要なので、誰でも船をレンタルして操縦できます。キャンピングカーをレンタカーとして借りるのと同じですね。

ハウスボートの中でも「ナローボート」という船はユニークです。産業革命時代、運河で石炭輸送に活躍した細長い船をベースにしたナローボートは、操縦も簡単でスピードもあまり出ないので、初心者でも安心して楽しめます。イギリスには3,000km以上の運河が今でも残っていて、ナローボートを楽しむ人たちが世界中から集まってきているのです。
ナローボートのレンタル期間は最短4日から。「ハイヤーカンパニー」と呼ばれるレンタル会社は全国百ヶ所以上。夜はキッチンで作った食事に舌鼓を打ち、夕暮れにエールビールで乾杯。水鳥の声で目覚めた朝には熱々のイングリッシュ・ブレックファスト。気に入った風景に出会えたなら、ボートを泊めてスコーンを焼き、カントリーサイドのど真ん中でのティータイム。ナローボートの旅でしか味わえない、水辺の素敵な時間です。

自分で操縦するのはちょっと不安、イギリス旅行に行って自炊はちょっと、という方には、そういったサービスがすべてついているクルーズもあります。これは「ホテルボート」というシステムです。
そのひとつはナローボートをホテルボートに使うもので、見た目は細長いナローボートそのものですが、キャビン内は小さなプライベートルームに仕切られています。食事やティータイムにはクルーお手製の料理やお菓子が楽しめますし、ちょっと退屈になったら運河沿いのトゥパスを散歩するのもいいでしょう。ボートのスピードは徒歩と同じくらいですから、またどこでもボートに戻ることができます。

イングランドのテムズ川、スコットランドのカレドニア運河には、もっと大きな「ダッチバージ」という船を使ったホテルボートがあります。これは、まさに動くホテル。ベッドルームもリビングも広々しています。食事は、専属シェフの作るフルコース。クルーズの期間中、きめ細かく、温かいサービスが受けられます。
ホテルボートに乗るには1週間程度の時間が必要ですが、それだけの時間を充てるだけの価値がある水の旅になるはずです。

最後に、日本人の方が運営しているキャプテンプーク・カナルボートを紹介しておきましょう。キャプテンプークは、イギリス人男性アンディさんと日本人女性あつ子さんご夫婦のナローボートで、操縦などの作業はすべて彼らがやってくれます。
一般のハイヤーカンパニーで借りる場合は最短でも4日間必要なのに対して、キャプテンプークは半日のツアーから用意。日程がタイトでも、これなら気軽に参加できるのではないでしょうか。
(キャプテンプーク・カナルボートが新しいボートを建造中のため、今年に限って4日間からのツアーになります)
いよいよ夏本番! 今年は、自分だけの水辺をイギリスで見つけてきてくださいね! ボン・ボヤージュ!(よい船旅を!)
秋山岳志
AKIYAMA Takeshi
編集オフィス「南風(Nampoo)」を主宰する旅行ライター。特にイギリスの運河、鉄道遺産を中心に取材している。主な著書に、『
英国運河の旅』、『
イギリス式極楽水上生活』、『
英国「乗物遺産」探訪』など。
参考サイト