第2回 鉄道で行くイギリス文学の世界
June 2010
イギリス文学ほど日本で親しまれている外国文学はありません。そういった数々の作品の舞台、作家の足跡を訪ねて、鉄道に乗ってみましょう。

映画『アリス・イン・ワンダーランド』が大ヒットしています。
今回は、その原作となった『ふしぎの国のアリス』の舞台、オックスフォードから旅を始めましょう
『ふしぎの国のアリス』は舟の上で生まれた
オックスフォードへの鉄道の玄関口は、ロンドン・パディントン駅。ブリストル、バースなど南西部への列車が主に発着する駅ですが、かつてこのエリアで鉄道会社を営業していたグレート・ウェスタン鉄道は、ディドコットという駅からオックスフォード方面へ支線を延ばします。開通の数年後、オックスフォード大学に入学した1人の学生がいました。彼の名はチャールズ・ドジソン、のちに『ふしぎの国のアリス』『鏡の国のアリス』を残すルイス・キャロルの本名です。
大学を卒業後、ルイス・キャロルはそのまま大学に残り、数学教師の職を得ます。そこで、友人だった学寮長のヘンリー・リデルの娘、アリス・リデルと出会います。キャロルはアリスをとても気に入り、彼女を連れ出してはあちこち連れ回っていました。ある日、彼はアリスとその姉妹3人をテムズ川のボート遊びに誘います。
川の真ん中でアリスたちは、キャロルに「物語を作って聞かせて!」とせがみました。弱った彼は、ボートの上で即興的に創作を始めました。これが『ふしぎの国のアリス』として後に出版されることになります。
ルイス・キャロルの足跡をオックスフォードに訪ねて
彼が学生として過ごしたオックスフォード大学クライストチャーチ校は、伝統と権威あるオックスフォード大学の中でも特に優れた学生が集まることで世界中に知られています。校内は一般にも公開されており、学食として使われている「グレート・ホール」にはキャロルの肖像画もかけられています。
キャロルがアリスたちを誘って舟に乗ったのはフォーリー橋。彼らにボートを貸したソルターズ蒸気船商会は、今もこの橋のたもとで営業しています。ここからアリスご一行と同じ5人乗り手漕ぎボートでテムズを下るのもいいですし、夏場に運航されている大型の蒸気船もなかなか旅情があります。ボートに乗る時間がない人は、橋の下にあるパブで川面を眺めながら食事を楽しんではいかがでしょうか?
そのほか、アリス関連のグッズを集めた「アリス・ショップ」など、ファンならずとも足を運びたいスポットが点在するのがオックスフォードです。
そのほかにもある、アリスゆかりの町や村
キャロルが生まれたのは、イングランド北西部チェシャー州にあるダーズベリーという村。村の教会では、キャロルの父が司祭を務めていました。チェスターまでは、ロンドン・ユーストン駅から特急で2時間ほど。ダーズベリーに最も近い駅はルンコーン・イーストで、チェスターから鉄道で約20分です。
またウェールズのスランドゥドゥノは、アリス・リデル一家が避暑にやってきた場所として知られています。スランドゥドゥノへは、上述のチェスターから鉄道で約1時間です。
秋山岳志
AKIYAMA Takeshi
編集オフィス「南風(Nampoo)」を主宰する旅行ライター。特にイギリスの運河、鉄道遺産を中心に取材している。主な著書に、『
英国運河の旅』、『
イギリス式極楽水上生活』、『
英国「乗物遺産」探訪』、『
機関車トーマスと英国鉄道遺産』、『
イギリス鉄道遺産の旅』など。
参考サイト