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第1回  鉄道で行くイギリス文学の世界
April 2010
イギリス文学ほど日本で親しまれている外国文学はありません。そういった数々の作品の舞台、作家の足跡を訪ねて、鉄道に乗ってみましょう。
第1回目は、『きかんしゃトーマス』シリーズの原作者、ウィルバート・オードリーを取り上げます。


鉄道で行くイギリス文学の世 少年ウィルバートを鉄道の世界に誘ったボックス
イギリス南西部への玄関口、パディントン駅。この駅から特急に乗り、世界遺産にも登録されているバースを目指します。バースで降りたら、路線バスで少しだけロンドン方向に戻ったところにボックスという小さな村がありますが、ウィルバート・オードリーはここで6歳から17歳まで、多感な少年時代を過ごしました。

鉄道で行くイギリス文学の世界 ボックスで暮らした約12年間、オードリー一家は2回の引越しをしていますが、最後に住んだ家「ローン・ハウス」は現在B&Bになっていて、誰でも泊まることができ、ウィルバートが寝起きしていた部屋は「オードリーズ・ルーム」と命名されていて、トーマス・ファンに大人気だとか。
幼少時代のウィルバートは、父に手を引かれて毎日のように散歩をしていましたが、中でも自宅のすぐ近くにあるボックス・トンネルは大のお気に入りでした。当時、南西イングランドに線路を持っていたグレート・ウェスタン鉄道、その名エンジニアであったイザムバード・キングダム・ブルネルの最高傑作と呼ばれるこのトンネルから真っ黒な煙とともに飛び出してくる機関車を見ながら、少年の心はどんどん鉄道に惹かれていきます。当時の経験がなかったら、トーマス・シリーズは生まれなかったかもしれません。

鉄道で行くイギリス文学の世界 愛する妻マーガレットとともに眠るストラウド
パディントンからバースに来る途中にあるスウィンドン駅で、グロスター方面への支線に乗り換えましょう。降りるのはストラウド駅。コッツウォルズの南の端に位置する小さなこの町には、オードリー夫妻が眠るロッドバラ教会があります。
夫妻がストラウドに引っ越してきたのは1966年。ウィルバート自身の筆による「汽車のえほん」(トーマス・シリーズの原作)の後期の作品はここで書かれました。1972年の『わんぱく機関車』でウィルバートは作品づくりをやめてしまいますが、その後もストラウドで夫婦睦まじく暮らしていたようです。

1989年、妻マーガレットがこの世を去ったとき、ウィルバートは悲嘆に暮れて何も手に付かなくなりながら、彼女が葬られたロッドバラ教会への墓参だけは毎日欠かさなかったそうです。そして彼自身も1997年に亡くなり、同じ教会の敷地内に眠ることになりました。教会ではその後、ウィルバートを偲んでトーマスをかたどったステンドグラスを据えつけました。
ロッドバラ教会は、駅を挟んで町とは反対方向にあり、ちょっとわかりにくいので、町のインフォメーション・センターで場所を確認してから行ったほうがいいでしょう。

鉄道で行くイギリス文学の世界 絵本に出てきた鉄道遺産を訪ねて
トーマス・シリーズの中には、実在の鉄道遺産をモデルにした作品が少なくありません。たとえばウェールズのタリスリン鉄道は、ウィルバートの原作による『4だいの小さな機関車』など5作品で取り上げられているほか、テレビシリーズ「きかんしゃトーマスとなかまたち」でもたびたび「鉱山鉄道」として登場します。同じウェールズのスノードン登山鉄道は『山にのぼる機関車』で、湖水地方にあるミニSL、レイベングラス&エスクデイル鉄道は『小さな機関車たち』で、その姿が生き生きと描かれています。また、イースト・サセックス州のブルーベル鉄道に実在する機関車「ステップニー」は、同じ名前で『がんばりやの機関車』で活躍していますね。

鉄道で行くイギリス文学の世界 そのほか、キャラクターのお面をつけた機関車が走る「デイアウト・ウィズ・トーマス」というイベントも各地の鉄道遺産で開催されています。絵本やテレビで紹介されたエピソードを再現するなど、楽しい催しが盛りだくさんです。



プロフィール 秋山岳志
AKIYAMA Takeshi
編集オフィス「南風(Nampoo)」を主宰する旅行ライター。特にイギリスの運河、鉄道遺産を中心に取材している。主な著書に、『英国運河の旅』、『イギリス式極楽水上生活』、『英国「乗物遺産」探訪』、『機関車トーマスと英国鉄道遺産』など。




参考サイト
ローン・ハウス (http://www.lornehousebox.co.uk/)
タリスリン鉄道 (http://www.talyllyn.co.uk/)
スノードン登山鉄道 (http://www.snowdonrailway.co.uk/)
レイベングラス&エスクデイル鉄道 (http://www.ravenglass-railway.com/)
ブルーベル鉄道 (http://www.bluebell-railway.co.uk/)
デイアウト・ウィズ・トーマス (http://www.thomasandfriends.com/uk/parents/dowt/railways.html)









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