第1回 鉄道遺産の魅力とは?
September 2009
世界で初めて鉄道を実用化したイギリスには、様々な鉄道遺産が保存され、今でも多くの人々に愛されています。
その魅力をご紹介します。

世界で初めて鉄道を実用化したイギリスには、その誇りの象徴でもある「鉄道遺産」が全国に点在しています。鉄道遺産とは、使われなくなった線路や車両を保存し、一般に公開するもので、往年の懐かしい機関車や客車が元気な姿を見せてくれています。真っ黒い煙を噴き上げるSL、板張りの床にボックスシートの客車、そんなレトロ感たっぷりの列車が出入りする駅やホームも、まるで映画のセットのような情緒にあふれているのです。
イギリスの鉄道遺産の特徴は、機関車や客車が実際に動く状態で保存されている「動態保存」であり、誰でも乗って楽しむことができることです。鉄道遺産はそれぞれ年間スケジュールと時刻表を発表していて、それを見て訪問すれば、すぐに乗ることができるのです。特別なイベント等を除き、予約は不要ですから、観光の合間に乗ってみたり、ウォーキング・コースの途中に鉄道遺産の乗車を組み込むのも面白いでしょう。
鉄道遺産には、大きく分けて4つのカテゴリーが存在します。
①タイムテーブル・サービス
廃線になった路線を鉄道遺産として復活させたもので、列車は限られた区間の駅と駅との間を往復します。乗車時間は、おおむね30分~1時間程度。駅の数は3~5つというところでしょう。本物の機関車が線路の上を走る姿は、迫力そのものです。
②レイルウェイ・センター
かつて使われていた機関庫や操車場を使って車両を展示する施設です。施設内の線路を運行する動態保存の車両も多く、もちろんこれに乗ることも可能です。
③ミュージアム(博物館)
館内での展示がメインの施設です。ヨークの国立鉄道博物館をはじめ、鉄道に特化した博物館が各地にあるのはさすが鉄道発祥の地といえますが、それ以外に、技術系や科学系の博物館でも鉄道を展示しているところがあります。
④メインライン・オペレーション
「メインライン」とは現在営業している一般の鉄道のこと。その上を鉄道遺産の機関車や客車が走るという、これもイギリスならではの鉄道の楽しみ方です。イギリスには、メインライン・オペレーションを企画・運営する旅行会社があり、各社各様のスケジュールやイベントを持っています。
客車に座っているだけが鉄道遺産の楽しみ方ではありません。鉄道遺産は各々、趣向を凝らしたイベントを定期・不定期的に開催しています。
●ダイニング・トレイン●
食堂車を連結し、車内で食事やお酒を味わえるイベントです。フルコースのディナーが提供され、ドレスアップして乗り込みたくなるような列車もあれば、お茶とスコーンで友達とおしゃべりが楽しめる気軽なスタイルもあります。白いテーブルクロスにウェイターが恭しく料理を運んでくる姿は、古い映画のワンシーンのようです。また、地元産の生ビールの樽を積み込み、グラス片手にほろ酔い加減の列車の旅ができる「リアルエール・トレイン」というのもあります。
●「戦争」イベント●
第2次世界大戦中の鉄道の様子を再現しようというイベントで、みんな軍服を着たりモデルガンをかついだりして列車に乗り込んできます。なにか物々しい感じがするかもしれませんが、これはまさに大人のコスプレ。いい歳をした大人がまじめな顔でコスプレに興じているのは、どこか微笑ましいものがあります。停車する駅の周辺にも野戦基地が設けられたりしていて、みんな100%なりきりで楽しみます。
●『機関車トーマス』イベント●
子供に大人気の『機関車トーマス』に登場するキャラクターの顔を付けた機関車たちが走ります。絵本やテレビで見たあの世界が実際に目の前に現れると、子供だけでなく、大人も大興奮。物語に登場する機関車たちのハプニングを再現したショーもあったり、1日中楽しめるイベントになっています。
次回からは、おすすめの鉄道遺産を紹介していきたいと思います。
秋山岳志
AKIYAMA Takeshi
編集オフィス「南風(Nampoo)」を主宰する旅行ライター。特にイギリスの運河、鉄道遺産を中心に取材している。主な著書に、『
英国運河の旅』、『
イギリス式極楽水上生活』、『
英国「乗物遺産」探訪』など。
参考サイト