2009年12月11日
英国を代表するアーティストを数多く輩出しているターナー賞。日本でも、森美術館にて「英国美術の現在史:ターナー賞の歩み展」(2008年)と題し、大きく取り上げられた。
2009年度のターナー賞の受賞者は、現在、テート・ブリテンで作品が公開されている4人の候補者の中から、グラスゴー出身の画家、リチャード・ライト氏(Richard Wright)と発表された。
リチャード・ライト氏は、テート・ブリテンの空間にインスパイアされたという壮大な壁画を制作。ルネッサンス期のフレスコ画の技術を駆使し、手作業で貼り付けられた金箔の抽象画は、何とも言えなく美しく、観るものの心を奪う。
しかし、テート・ブリテンの壁に直接描かれた作品は会期終了後に消されてしまうという儚い一面を持ち、アート市場への戦略的な介入を意識して制作をするアーティストへのアンチテーゼとも言われている。
つまり、メディアへの話題づくりを積極的に行い、アート市場で高額な価格で取引される作品と相反して、リチャード・ライト氏のフレスコ画は、展覧会に訪れた人々の記憶の中だけで生き続ける。
リチャード・ライト氏は、英国紙ガーディアンのインタビューに、「ダミアン・ハーストやトレーシー・エミンのようなアーティストとは、金銭的な意味合いから全く異なるものである。」と答えている。
現在、49歳のライト氏は、50歳以下という年齢制限のあるターナー賞への最後の挑戦を成し遂げた。
人目を引くような派手さがあるわけではないが、長い年月をかけて熟成したスタイルを確立したライト氏の獲得した栄光はとても価値のある尊いものに感じる。
昨今の経済事情で、世知辛い世の中であるが、リチャード・ライト氏の輝かしい成功にとても勇気づけられた一日であった。

Richard Wright "no title" 2009 Courtesy the artist; Gagosian, London; The Modern Institute / Toby Webster Ltd, Glasgow and BQ, Berlin
Photo credit Sam Drake and Gabrielle Johnson, Tate Photography
リチャード・ライト氏の緊縛のフレスコ画は、2010年1月3日までテート・ブリテンにて展示。












