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Home  > ブログV  >  RICAのロンドン日記 私の好きなイギリス

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イギリスに滞在中のヴァージン特派員達が、イギリスの「今」の情報をお届けします!!

RICA プロフィール


ビートルズに始まるブリティッシュ・ロック、マーチャント&アイヴォリーの映画、森嶋通夫著『イギリスと日本』の洗礼を受け、精神的豊かさと最先端文化の発信地と信じた英国に移り住んで12年のライター/プロデューサー。
Ricaのコラム http://h3m.jp/rica/r01.html


イギリス議会下院総選挙の日程が告示されたのを受け、4月15日にイギリスのテレビで与野党党首3名による公開討論が中継されました。番組終了直後の調査では、労働党のゴードン・ブラウン首相が最低の20%未満、対立政党である保守党党首のデヴィッド・キャメロンが30%に及ばなかったのに対し、野党第2政党であるリベラル・デモクラット(自由民主党、イギリスでの通称は「リブ・デム」)党首のニック・クレッグが、50%以上という最も高い支持率を得ました。

 

 

4月15日の党首討論

会場の一般参加者からの質問も理路整然としています

自由民主党といっても日本の自民党とは異なり、Liberal Democratという名前のとおり、リベラルな路線を打ち出している政党です。過去65年間、イギリスでは、真っ向から対立する保守党と労働党が振り子のように政権を交替してきました。ところが、90年代に労働党が労働者階級の政党であることを辞め、ニューレイバー(新労働党)へ変貌する一方、保守党は右寄りから中道へと修正しました。こうして両党の違いが薄れてきたところへ、新たな対抗勢力として台頭してきたのがリブ・デムでした。同党はイラク戦争において参戦反対を表明し、一気にその支持率を上げました。

イギリスの政治はエキサイティングだと思いますが、それは何故なのでしょう? その理由を以下のように大胆にまとめてみました。

(1)イギリスの国会中継は最高のエンタテイメントである

イギリスの国会中継は一流のディベートを視聴できるエンタテイメント。議員たちは皆、口から先に生まれてきたのかと思うくらい雄弁で議論好き。ここではユーモアのセンスも問われますから、ウィットに富んだ皮肉やジョークもたっぷり。自分たちが批判されているにも拘らず、首相や閣僚も野党議員の発言に思わず顔がほころび、一緒に笑ってしまうことも多いです。

 

 

2年前に行われたブラウン首相とキャメロンの丁々発止

エンタテイメント性に拍車をかけているのがテレビやラジオの風刺コメディ。各界のそっくりさんが出てきて、ブラック・ユーモアのきついコントを繰り広げます。相手が王室であろうが、聖職者であろうが、政治家であろうが容赦ありません。ノリで言えば、教師をあだ名で呼んだり、変な似顔絵を描いたりする小学生のいたずらに近いものがあります。イギリスの俳優の物まねの巧さは半端ではありません。それが良い脚本と組み合わせられると、映画『クィーン』のような傑作が生まれることもあります。

 84年から96年までITVで放映されたSpitting Image(「そっくり」の意)も最高です。セレブや政治家をテーマにしたパペットのコメディなのですが、非常によく出来ています。たとえば、実際の彼女はそんなことはなかったのですが、パペットの元サッチャー首相はいつも鋼(はがね)のような真っ黒のスーツとネクタイを着けて登場します(「鉄の女」ですね)。私はそれを見ただけで笑ってしまいます。

 

 

Spitting Imageから。当時は議員たちもこの番組のファンだったとか

ディベートは頭脳と言葉のスポーツ。今回の党首討論では、ブラウン首相が青、キャメロンが赤、クレッグが黄という風に、スポーツ選手のユニフォームよろしく、各党のシンボル・カラーのネクタイを締めて颯爽と登場しました。この辺も国民に分かりやすくていいですね。

(2)傑出した論争能力がなければ、リーダーとはみなされない 

国会会期中は、毎日1時間、野党議員から閣僚へのQuestion Timeという質疑応答の時間が設けられています。首相への質疑応答は毎週水曜の午後に30分間行われます。映像をご覧いただければ分かるように、首相は野党議員全員を敵に回し、矢のような攻撃を受けます。間髪入れずに質問を交わすことができなければ、党を背負うリーダーとしては失格です。このようにイギリス議会はディベート大会ですから、頭の回転が早く、口が立つ人が自然とキー・プレイヤーになっていくのです。

 

06年のブレア首相とキャメロンの対決。見応えあります

 

(3)スター・プレイヤーが若く、魅力的である

2007年夏、私はパーティでクレッグに会ったことがあります。彼はそこで澱みなく、ユーモアたっぷりの完璧なスピーチを披露しました。この人は将来、出世するだろうと思いましたが、同年暮れ、彼は40歳というリブ・デムとしては史上最年少の党首に選ばれました。

この就任年齢が例外的に低いのか。実はそうでもなく、トニー・ブレア前首相は41歳で労働党最年少の党首になり、43歳で20世紀最年少の首相になりました。キャメロンが保守党党首になったのは彼が39歳の時、彼の前任者であるウィリアム・ヘイグに至っては36歳でした。

ご覧のとおり、高いレベルの討論を要求される議会は精神的・肉体的に消耗しますから、気力・体力・知力の3拍子が求められます。働き盛りのピークである40歳辺りなら、キャリアの上でも、また人間としても、最も活力のある時期を国民に捧げることができます。今回のような公開討論では、国民に対し、passion(熱意)とdetermination(決意)をどこまで示せるかが鍵となります。

ともに43歳という同い年で同じ学年のキャメロンとクレッグには、勢いとフレッシュなイメージがあります。どちらもパブリックスクール出身(キャメロンがイートン、クレッグはウェストミンスター)で、オックスブリッジの卒業生(キャメロンがオックスフォードでクレッグはケンブリッジ)。大学ではどちらもテニス部の主将だったという点まで同じ。違いといえば、キャメロンがウィリアム4世の子孫であり、専ら国内での政治キャリアを着実に積んできたのに対し、クレッグは大和日英基金の前会長であったロシア系の父親とオランダ人の母を持ち、5ヶ国語を操り、奥様もスペイン人の国際弁護士という国際派であることでしょうか(故にリベラルであることも納得。ちなみにキャメロンの奥様は英国王室御用達ブランド、スマイソンのクリエイティブ・ディレクターです)。

キャメロンは2007年に雑誌『GQ』英国版で、ジュード・ロウやデヴィッド・ベッカムを抑えてダニエル・クレイグに次いで世界のベストドレッサー2位に選ばれ、その表紙を飾りました(同特集でブラウン首相は可哀想にワースト・ドレッサー2位でした)。キャメロンはまた、英国雑誌New Woman Magazineが07年に発表した、1万人の女性が選ぶ世界で最もセクシーな男性トップ100の87位にも入っています(ブラウン首相も97位に食い込みました)。

こんなキャメロンですが、ご本人は自然体で、エコをアピールして自転車通勤をしたり、3人の子供のうちの一人が重度の障害を持って生まれたこと、その子が昨年、突然亡くなったショックなどを隠さないところなどが好感が持てます(キャメロンの奥様のサマンサは現在、再び妊娠中です)。

一方、党首に就任したクレッグは、それまでのリブ・デムの垢抜けないイメージを一新しました。2年前には雑誌GQによる赤裸々でセクシャルな内容のインタビューを受け、それらにあくまでも淡々と答えています。New Woman Magazineは08年に休刊しましたが、今後、他誌が同様の特集を組んだら、クレッグがキャメロンを抜くかもしれません。

イギリスの政治家も複雑で色々な事もありますが、何せ次から次へと優秀なプレイヤーが登場しますから、やはり面白いことに変わりありません。党首公開討論は今週22日と来週29日にも行われます。目が離せません。








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