2010年3月25日
ロンドンにあるヨーロッパ最大級の複合アート施設、バービカン・センターで、こんなアート・インスタレーションが披露されています。
これを作ったのは、Céleste Boursier-Mougenotというフランス人アーティスト。音楽家として教育を受けた彼は、「日常生活全ての行為が音楽になる」というアイデアをユーモラスに証明してくれます。これまでもハーモニカに掃除機を付着して、ローテクのオルガンみたいな音を奏でたり、子供用プールの水の上に皿を浮かべて、それが触れ合ってできるチャイムのような音を聴かせたりして、「音楽」の概念に挑戦しています。
今回の主役はキンカチョウという40羽の小鳥たち。彼らが部屋に仕掛けられたエレキ・ギターやシンバルに止まったり、遊んだりする度に、ビジターがロックを体感するという仕組み。音楽とは何かと考え始めたBoursier-Mougenotは、もう15年も小鳥たちと「コラボレーション」を行っているそうです。動物好き、小鳥好きの私には嬉しい企画。こういう馬鹿馬鹿しいことに真剣に取り組んでくれるロンドンのアーツ・シーンに感謝します。
Boursier-Mougenot曰く、彼の1歳の息子もギターが「弾ける」とか。息子はギターというおもちゃで遊んでいるだけだと思いますが、父親はそこに音楽を見出している。でも、アートって、本来、子供のような心で制作したものを崇めることなのかも。それを「くだらない」と思うか、「面白い!」と感じられるかは観客の認識次第。アートとは、それを観る人の心の豊かさに訴えるものなのかもしれません。
バービカン・センターのテラス
センター内のラウンジ
バービカン・センターはバービカン・エステートという地域開発プロジェクトの一部として建設され、1982年にオープンしました。バービカン・エステートは、1960年代半ばから70年代にかけて第二次大戦で破壊された場所に建設されたモダニズム建築の公団。14万平方メートルのエステート内には名門女子高や演劇学校もあります。現在、約2,000世帯のフラット(アパート)に4,000人が住んでいるそうです。
バービカン・センターは国際演劇プログラムにかけてはイギリスの先駆者的存在。昨年はサイモン・マクバーニー演出、深津絵里さんらが出演した『春琴』、蜷川幸雄演出の歌舞伎版シェークスピアの『十二夜』などが上演され、私も何度か足を運びました。蜷川氏はほぼ毎年のようにここへ戻ってこられます。今年もバービカンで5月5〜8日まで藤原竜也さん(彼もバービカンの常連です)主演の『ムサシ』を上演します。
Céleste Boursier-Mougenotのインスタレーションを展示するバービカン内のThe Curveというギャラリーでは、入場無料の企画展が行われています。ロンドンの文化施設には必ず無料の展示スペースがあります。たとえば、国立映画センター(National Film Theatre)内のBFIギャラリーというスペースでは興味深い企画展が見られます。映画監督のミシェル・ゴンドリーのビデオ・アートもありました。こちらのサイトで過去の展示を見ることができます。
大英博物館やテート・モダンの常設展も無料ですよね。余裕のある観光客はミュージアムの売店でお土産を買ったり、カフェでお茶を飲んだりすればいいし、そうでない人は展示だけを見ればいい。無料にすることで多くの人を呼び寄せ、一部の人から収益を得るシステムです。無料といえども決してチープでなく、質は非常に高い。それはThe Wallace Collection、Sir John Soan's Museum、Photographer's Galleryといったウェストエンドのギャラリーだけでなく、うちの近所のカムデン・アーツ・センターや176というギャラリーにも言えること。古典や現代アートのジャンルを問わず、充実した時間を過ごすことができます。こういう土壌があるから、世界中からアーティストの卵たちが集まり、刺激を受け、さらに面白い作品が生まれるのでしょう。
イギリスにはお金を使わずに豊かな気持ちになれるものがあります。それらについては、また1つずつご紹介していきたいと思います。
Barbican Centre
Céleste Boursier-Mougenotのインスタレーションは5月23日まで(無料)
Silk Street
London EC2Y 8DS
Tel 020 7638 4141






