ミレニアム・イヤーにオープンしたロンドンの国立現代美術館テート・モダンが、先月12日に10周年を迎えました。テムズ川南岸の元発電所を改造し、オープン以来、のべ4,500万人が訪れ、世界で最も入場者数の多い現代美術館となりました。ここのオープニング・パーティに行ったのが、もう10年前になるのですね。パーティには確かミック・ジャガーやマドンナも来て、当時の首相トニー・ブレアと握手したことが懐かしいです。
テート・モダンは、テート・ブリテン(前テート・ギャラリー)から分離された20世紀以降の国内外の作品を所蔵。年代や時代別ではなく、「風景」「静物」といったテーマに沿った展示方法が注目を集めました。大型発電機のあった1階のタービン・ホールでは、ユニリーバ・シリーズとして、毎年入れ替わりでコミッションを受けた現代美術家によるインスタレーションを展示。その記念すべき第一回作品が、先月亡くなったルイーズ・ブルジョワのスパイダー「ママン」。これは衝撃的でした。同じ作品は六本木ヒルズにもありますね。
現代アートってよく分からないという方が多いかもしれません。以前、このブログで、ロンドンにはテート・モダンをはじめ、現代アートが無料で体験できるギャラリーがそこらじゅうにあることを書きましたが、それらに身近に接しているうちに、余計なことは考えず、ただそのまま見て、聴いて、感じればいいのだということが自然に分かるようになりました。音楽を聴くのと同じ。作品を前に泣いてしまったこともあります。心を真っ白にして向き合った時、眠っていた記憶や無意識のレベルに訴えかけてくるもの、作品の謎掛けに観客が意味を与えるもの、私にとってはそれが現代アートです。
では、最近私が気に入った2つのエキシビションをご紹介しましょう。1つは7月10日までWhite Cube Mayfairで展示されているアントニー・ゴームリーのBreathing Room III(呼吸する部屋 その3)という作品。写真はこちらをご覧ください。
ゴームリーはイギリス現代アートの芥川賞ともいえるターナー賞を1994年に受賞した、イギリスを代表する現代アーティストの一人。北イングランドのニューキャッスルのパブリック・アート「エンジェル・オブ・ザ・ノース」や、等身大の人体彫刻を街中に点在させたインスタレーションなどで知られていますが、私が感心したのは2007年にHayward Galleryで観た(というか体験した)Blind Light。雲を詰め込んだような濃厚な蒸気で満たされた8x10mのガラスの箱。中に入るとまさしく「五里霧中」「暗中模索」の世界。ゴームリーは「生きているという実感を喚起させる作品」を作り続けているそうですが、この箱に入り、また出てくることによって、現実と仮想現実が入り乱れる村上春樹の小説のような体験をしました。作品の写真はこちらをどうぞ。
そんなゴームリーの最新作がWhite CubeのBreathing Room IIIです。暗室に光るマトリックスのようなインスタレーション。かと思うと、室内がさっと昼間のように明るくなり、その場にいる全員の姿があらわに。バツの悪い雰囲気が90秒続いた後、部屋は再び暗室に戻ります。ここでも観客は仮想現実から一気に現実世界に引き戻される体験をするのです。

ピカデリーの喧噪から閉ざされた中庭に
ひっそりと建つマッチ箱のような
White Cube Mayfair
もう1つのお薦めエキシビションは、ロンドン塔から東へ徒歩20分ほどのWappingにあるギャラリー、Wapping Projectで7月18日まで展示されているUnited Visual Artists(UVA)のChorusという作品です。

Wappingの風景
子供たちがカヤックを習っていました
テムズ川を挟んで向こうに見える高層ビルは
ロンドン南東部の新金融街カナリーワーフ
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天気の良い日は気持ちいい
テムズ川沿いの遊歩道もすぐ側です

1890年に建立され、1977年まで使われていた
水力発電所に2000年にオープンした
ギャラリー&レストラン、Wapping Project
今年はTate Modernの横に
Wapping Project Banksideという分室もオープン

一歩足を踏み入れると、カフェ&レストラン

こんなのアリ? 発電機の間でダイニング
モダン・ヨーロピアン料理のレストランで、評判も上々
この奥にある元ボイラー・ホールが展示スペース
United Visual Artists(UVA)は2002年に結成されたクリエイター集団。ロンドンを拠点にライブパフォーマンス、インタラクティブ作品、インスタレーションなどで活躍。日本でも以下のとおり興味深い作品を発表しており、世界的に注目されているグループです。
2008年冬に六本木ヒルズに設置された
UVAの音と映像のインタラクティブ・アート
私もちょうどこの時、日本にいて、
通りかかったので遊びました 楽しかった!
So cool!
2008年秋、山口県山口情報芸術センターに出現した
UVAの作品、Array(アレイ)
Chorusはイングランド北東のダラム大聖堂で既に発表され、4日間で75,000人の入場者を集めたヒット作。真っ暗な空間に吊るされた照明とスピーカーが1つになった箱が、ややホラー映画を連想させるような音楽に合わせて、光の色や速度を変えながら振り子のように揺れたり、止まったりする「音の彫刻&パフォーマンス」。これはもうぜひ実際に体験してみてください。ハマります。
White Cube Mayfair(Breathing Eoom IIIは7月10日まで)
25-26 Mason's Yard London SW1Y 6BU
Tel 020 7930 5373
Wapping Project(Chorusは7月18日まで)
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Wapping Hydraulic Power Station
Wapping Wall, London E1W 3SG Tel 020 7680 2080
どちらも入場無料です
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