2010年8月11日
最愛の愛犬をなくしてから2年近く経った頃、「犬のいない生活はとても淋しいけれど、かと言って次の犬を飼う心の準備もできていない。」という私たち夫婦のところに娘が聞きつけてきた情報は「バタシーのドッグズ&キャッツホームが、何かの理由で他の犬と一緒にホームで暮らすことのできない犬のために里親を探している」ということでした。永久に飼うことには抵抗があるけれど、短期間なら……と即刻バタシーに連絡を取りました。バタシーのドッグズ&キャッツホームは英国に多くある犬、猫のレスキュー.チャリティ団体のひとつです。捨て犬や虐待を受けた犬を救助してリホームするこの動物愛護団体は1860年に設立され、ヴィクトリア女王に始まり現在でも王室の保護を受けています。現在のパトロンは現エリザベス女王です。

早速書類を取り寄せて申請し、家庭訪問で面接を受けた後で里親になることが決りました。
こうしてやってきたのがアンバーです。「貴方たちに最適と思われる犬がいます。」と言われてアンバーに会った時のことは今でもはっきり覚えています。センターの入り口に、「リホーム先を探しています。」という言葉と共にアンバーの写真が展示されたボードがありました。よほど緊急に里親が必要という感じです。
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サルーキーとラーチャーの血が入っていると思われるアンバーは、過去にどんな体験をしてきたのでしょう?ブルブル体を震わせて人を怖がっています。他の犬と一緒に怯えっぱなしで暮らすことはアンバーにとってよくないので、たとえ短期間であっても一刻も早く、静かな環境で暮らすことが大切と判断してのことだったのでしょう。バタシーではアンバーが必要なもの(ベッド、マット、おもちゃ、首輪、リード、コート、ドッグフード、食事のボール……..)を全て支給してくれました。それらは全てアンバーに新しい飼い主が見つかるまで貸してくれます。

センターで初めて対面した時のアンバー
我が家で暮らし始めたアンバーはしばらくの間、逃げ回っていました。食事やトイレも人がいるところでは決してしません。とにかく静かな犬で私たちがソファーに座ったり立ったりする度怖がって部屋から出ていきます。そうやって一週間が過ぎたある日、「アンバーを欲しいという人が見つかりましたから、連れてきてください。」という電話が入りました。その時の私たち夫婦の落胆といったら。こんなに早く別れることになるとは考えてもいなかったことです。即刻「私たちに引き取らせてください!」と返事をしました。
こうやって、今度は正式にアンバーを家の子に迎える手続きをしに行きました。獣医さんからの話があり(アンバーは心臓に問題があるために、それを承知で引き取るという書類にサインもしました)、料金を支払って(バタシーの規則で、リホーム前に避妊手術やマイクロチップを体に入れる費用が必要なので無料で引き取ることはありません)、やっとアンバーが家の子になったのが今年の3月です。本当に少しづつ少しづつ我が家の環境に慣れてきていますが、私はまだアンバーの吠える声も聞いたことがなく、いまだに人の前ではご飯も食べません。トイレも庭の隅で誰もいない時に済ませます。その分、名前を呼べばたまーに恐る恐るやってきたり、人がいない時はソファーで居眠りをするとか、普通の犬ではごく自然な行動をアンバーが起こせば大感激です。ますます「今までずいぶん遠慮しながら生きてきたのだなー。」とアンバーが不憫になるばかり。
バタシーでは健康な犬や猫を安楽死させることはありません。新しい飼い主が見つかるまでセンターで暮らせますし、何かの理由でリホームさせられない犬猫は、一生バタシーで暮らすことになるので、それらにかかる費用をいつも募っています。
日本では英国人のエリザベス.オリヴァーさんが始めた動物レスキューセンターが大阪にあります。以前、雑誌の仕事の際に始めてその存在を知ったのですが、非常に興味があります。日本でもこういった動物レスキューセンターがあることは素晴らしいことだと思います。英国ではバタシーをはじめドッグズ.トラストなどのレスキューセンターは一般公開していて、私は観光ガイドではありますが、お客様のご希望でそういった観光以外の場所にご案内することもあります。それだけ日本でも英国の動物福祉に関心を持っている方がいらっしゃるということだと思います。
犬と一緒に歩けば、犬好きなひとは微笑んでくれるし、時には見知らぬ人と長く立ち話しをすることもあります。犬の散歩のために行っていた公園で多くのひとと知り合いました。飼い主の半分くらいはレスキューした犬を引き取っていることもその時に知りました。不幸な犬を引き取って幸せな一生を送らせることの喜びは例えようがないということを多くの方からおしえられ、「今度飼う事があったら絶対にレスキューセンターから」と心に決めていました。その歓びアンバーが少しずつおしえてくれています。
地下鉄駅構内で見つけた犬のリホームのための宣伝

センターで新しい飼い主を待つ犬
アンバーが来てからは、数ヶ月の間に色々な人や犬と知り合いました。会えばアンバーの恐怖をなくそうとレイキを使って治療をしてくれるキャシー、アンバーが大好きな見た目は怖いのに中味がとてもソフトなスタッフォードシャー.テリアのデンゾー、ラブラドールのリッチー………
アンバーが完全に安心してこの家で暮らすにはまだまだ時間がかかると思います。でも私たちがアンバーを救った以上に、アンバーは私たちの暮らしに幸せを運んできていることは確かです。





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