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イギリスに滞在中のヴァージン特派員達が、イギリスの「今」の情報をお届けします!!

木島タイヴァース由美子 プロフィール


イギリス田舎周りとマーマレード作りを趣味とする。 人間より動物のほうが賢いと信じている在英年数30年以上の日本人。

職業柄、テレビで時代劇を見るとつい「このシーンはどこで撮影されたのかな?」とその場所が気になります。もっともレイコック村での撮影は建物ひとつ見ただけですぐにわかりますが。それほどレイコックはテレビや映画のロケに使われることが多いのです。ナショナル.トラストが村全体を所有しているおかげで13世紀から18世紀にかけて建てられた建物はほとんど完璧に近い状態で保存されています。村の学校に通う子供たちの遊び道具や路上に停めてある車を除いては、一歩村に足を入れた途端に完全に21世紀という時代から切り離されてしまう錯覚に陥ることでしょう。

 

    

 
今までに‘ハリー.ポッター’‘ショコラ’‘シャーウッドのロビン.フッド’他、数え切れないほどの映画やテレビドラマのロケーションに使われましたが、私には何といっても一番印象に残っているのは、2007年にBBCで放映された‘クランフォード’、そして1995年にやはりBBCが製作したジェーン.オースチン原作の‘高慢と偏見’でしょう。ミスター.ダーシーを演じたコリン.ファースの演技は「ミスター.ダーシーといえばコリン.ファース」ということを多くの人々の胸に植え付けてしまったと言っても言いすぎではないと思います。
 
そんなわけで、この国で時代物のテレビドラマや映画の好きな人たちはまず、レイコックに行くようです。しかし映画とは別に実際にジェーン.オースチン所縁の場所に興味がある方は、まず南のハンプシャー州にある小さな村チョートン(Chawton)にあるジェーン.オースチンズ.ハウス(Jane Austen‘s House)を訪れてみてください。
 
 
    
 
 
オースチンは父亡き後、母、姉のカッサンドラ、家族の友人であるマーサ.ロイドと共に1809年から1817年までの8年間をこの家で過ごしました。ここに住んでいる間、彼女の作家としての才能がどんどん芽を出します。「分別と多感」「高慢と偏見」「マンズフィールド.パーク」「エマ」が出版されたのもこの時です。そして「説きふせられて」を執筆後、「サディントン」が完成する前に病に倒れ、医者を頼ってウィンチェスターに行った時に大聖堂の近くにある家で41歳の生涯を閉じました。今はウィンチェスター大聖堂で眠っています。
 
 
 
博物館とはいえ、ここは正にジェーン.オースチンがいまだに住んでいるような気持ちで見学できることはオースチンファンにとってはたまらない魅力です。
 
 
それでは、今日は皆さんとちょっとだけ中を見学してみましょう。
 
ドローイング.ルーム
 
 
ピアノが好きだったジェーンはこの部屋で朝食の前にピアノを弾くのが日課だったといいます。客をもてなしたり、裁縫をしたり、絵を描いたり、本の読み聞かせをしたりしたのもこの部屋です。正にあの映画の場面の世界がここにあったと思えば感激もひとしおです。またここに移り住む前の家からもってきた父ジョージの本棚のある事務机も見られます。
 
 
   
ダイニング.パーラー
 
ダイニング.パーラーで当時高価であったお茶を淹れるはジェーンの役目でした。お茶は暖炉のそばの戸棚に鍵をかけて保管さてていました。また彼女が小説を書いたのもこの部屋で、実際にジェーンが使った小さなテーブルが窓際に見られます。暖炉には1810年ころの銅のケトルが置かれています。
 
    
キッチン
 
キッチンでは料理に使った道具のほか、当時の炉辺や小さなレンガのオヴンが見られます。
 
 
大きすぎない庭では3月初めに私が訪問した時は、スノードロップの白い花が咲いていました。200年前のお天気のよい日などは、やはりこの庭でジェーンがそこにあったであろうベンチに座って本を読んだのでしょう。
 
ここからそう遠く離れていないバースの町にはジェーン.オースチンが住んだことのある家が多く残っていますし、またジェーン.オースチン.センターではジェーンとバースに関わりのある品を展示しています。
 
英国の文学界ではもっともポピュラーな女流作家であるジェーン.オースチンの生涯をたどることで、今までと少し違った英国の旅を経験してみてはいかがでしょう。このブログを読んで皆さんが「行ってみたい!と思ってくださればとてもうれしいです。



 

ロンドン塔にいらっしゃる方は観光ガイドやビーフイーターから‘9日間だけ女王であったレディ.ジェーン.グレイ’の話を聞くことでしょう。日本の学校で習う英国歴代の王の中に彼女の名を見ることはまずありませんがたとえ9日間といえども英国ではレディ.ジェーン.グレイの存在は大きく、特にヴィクトリア朝時代の人たちのロマンをかきたてて以来、本や映画、絵などでよく取り上げられています。
 
レディ.ジェーンは、6回結婚し2番目の妻アン.ブリンとの結婚でローマ法王の許可が得られなかったためにローマン.カスリックから独立して英国国教会を設立したという英国きっての暴君として知られるヘンリー8世の妹メアリー.チューダーの孫にあたります。1536年にサフォーク公爵とメアリー.チューダーの娘レディ.フランシス.ブランドンの長女として生まれましたが母は異常に厳しいひとだったようで、体罰などの虐待もあったようです。そのためジェーンは小さいころから母に愛情を求める代わりに本に没頭したせいか当時の女性では最も高いレベルの教養を身につけた女性に成長していきます。
 
さて、ヘンリー8世の遺言で後継者は3人の子供が受け継ぐはずでした。まずは唯一の息子エドワード、そして彼に世継ぎがない場合は長女のメアリー、彼女に世継ぎがいない場合は次女のエリザベスが跡を継ぎ、彼女に世継ぎがない場合はヘンリーの妹メアリー.チューダーに継承権がわたるようにという遺言でしたが、歴史はそう単純に事が進むことはまずありません。エドワード6世が臨終の際に残した遺言では彼の後継者はヘンリーの長女メアリーではなく叔母であるメアリー.チューダーを指名したところから予定がくるってしまいます。これは長女のメアリーがカソリックであったこともありますが、息子がレディ.ジェーン.グレイと結婚したノーサンバード公爵の計らいによる影響も多大でした。とにかくエドワード6世亡き後はメアリー.チューダーの孫にあたるレディ.ジェーン.グレイがイングランドの女王として即位します。
 
ところがまたまたここで問題が起こりました。エドワード6世は15歳で死んだため、法的にヘンリー8世の遺書を変更できる年齢には達していないということでジェーンの女王の座の正当性が問われたのです。結果、ヘンリーの娘のメアリーがジェーンに代わって女王に即位し、気の毒な レディ.ジェーン.グレイは17歳になるかならないかの時にロンドン塔で処刑されてしまいます。
 
私がナショナル.ギャラリーにはお客様をご案内する際、ドラローシュが描いた『レディ.ジェーン.グレイの処刑 The Excution of Lady Jane Grey』をご紹介することがよくあります(写真)。目隠しをされて真っ白なサテンのドレスに身を包み、処刑の際に首を置くブロックの位置を探す様子のジェーンですが、その若く美しい手や腕の皮膚の下にはこれから送ったであろう人生の明かしである真っ赤な血が流れていることをを感じずにはいられません。
 
 
現在、同美術館で『歴史を絵画に ~    ドラローシュと レディ.ジェーン.グレイ』という特別展示が行われていますので英国の歴史に興味のあるかたは是非足を運んでください。(写真はクリスマスの時期ですが)
 
    
 
 
ドラローシュといえば19世紀に活躍したフランスの画家で、特に歴史画家として知られているひとです。彼のはっきりと力強く、しかし筆の後を残さないほど滑らかな技法によるドラマチックでありながらロマンチックな仕上げは当時のロマン画家の中でも、デラクロアと並んで彼の名を有名にした所以でしょう。歴史に忠実なひとたちは、時代にそぐわないジェーンや、処刑執行人の服装などに不満があるかもしれません。でも処刑が行われてから300年近くたった1833年に描かれたこの絵で、ドラローシュは歴史的事実より見る人への気持ちの効果を狙ったために、例え事実と違った部分があるにせよそれは全く問題になっていないのです。
 
今回の展示では『レディ.ジェーン.グレイの処刑』の他、ロンドン塔で殺された(と言われる)エドワード5世と弟のヨーク公爵を描いた『塔の中の王子たち』、『クロムウェルとチャールズ一世』『裁判前のマリー.アントワネット』『エリザベス一世の死』『クロムウェルの兵隊に侮辱されるチャールズ一世』などが展示されています。これらの絵画は下記のウェブから見ることができます。
 
http://en.wikipedia.org/wiki/Hippolyte_Delaroche
 
http://www.nationalgallery.org.uk/






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