2010年6月2日
7月4日まで、ヴィクトリア&アルバート.ミュージアムにおいて「Quilt(クイルト) 1700~2010年」という展示会が行われています(写真)。日本では‘キルト’と言いますが、敢えて‘クイルト’と書いたのは、スコットランドの男性の民族衣装でもあるKiltと混同してしまいそうなのでこちら読みにしました。

V&Aでのクイルト展は初めての試みで、企画から6年の歳月をかけて実現したものですが既に同ミュージアムでの今までの展示会の中でも最も成功しているもののひとつに挙げられています。V&A所有のものやジェフリー.ミュージアム、グラスゴー博物館、戦争博物館などから持ち込まれたクイルトが約70点近く展示されています。
クイルトとは、時間のある女性の趣味的なものと思われがちですがそうではないことは日本のアーティストを含む最近の作品を見ればわかります。当時は芸術品とは見なされなかった1700年のクイルトからペリー.グレイソン(写真)やトレーシー.エミンなどのモダンな作品が展示されていますが、私の目はどうしても古いクイルトに惹かれます。それは昔のものは、当時の歴史的背景やその社会で暮らす作者の人生そのものが感じられるからかもしれません。

Courtesy Getty Images
作品は時代.テーマに沿って展示されています。Bishops Court Quiltは1690年ごろに作られたといわれるベッドカバーで紋章が縫い付けられています(写真)

Courtesy Getty Images
ジョージ3世が自分の軍隊を閲兵している様子が描かれているのは18世紀のもので作者は自分の姿をもこの大切な場面に加えています。これが精一杯の自己表示だったのかもしれません。

Courtesy Getty Images
中でもジョージ4世のお后であったキャロライン.オヴ.ブランズウィックの顔が縫い付けてあるクイルト(写真)は当時の普通の女性たちの興味のところが理解できておもしろいと思いました。
ジョージ4世が借金返済のためだけに結婚したのがキャロラインでしたが、案の定結婚当初か夫婦仲は最悪で、王から戴冠式にさえ出席するのを拒まれたくらいです。当時の女性たちは、そんなキャロライン王妃に同情し、クイルトにまで彼女をサポートする気持ちを縫いこみました。あの「高慢と偏見」などで有名な女流作家ジェーン.オースチンでさえ、「なんとお気の毒な女性なのでしょう。私は王妃をできるだけ支持しますわ。だって私は彼女の夫(ジョージ4世)が大嫌いなんですもの。」と言っているくらいです。数年前にダイアナ元皇太子妃が亡くなった時を思い出します。いつの世でも「女性は女性の味方。一致団結してエイエイオー!」といことでしょうか?
Courtesy St Fagans National History Museum
ディール城でシルクとリボンを使って作られたコット用クイルト(写真)は初めて一般公開されるもので、このクイルトを実際に使った子供たちの肖像と、製作者が暗号を用いて書いた日記が一緒に展示されています。
このほか、ネルソン提督やウェリントン将軍ら歴代名士が描かれたものや、1841年オーストラリアに ラジャ号で送られた女性の罪人が船の中で作った「ラジャ.クイルト」、ロンドンのワンズワース刑務所で服役中の囚人たちが2年間かかってこの展示会のために作り上げたクイルトは刑務所の地図とともにそこでの生活、希望が一枚にこめられて興味深いです。
その昔、名もない人たちによって作られたクイルトはその芸術的価値のほか、今の時代で何よりも私たちを当時のひとに近づけてくれる役割を果たしている感じがしてなりません。












