過去30年の間にモネ展を始め、世界に名を残す比類ない多くの展示会を行ってきたロンドンの王立美術館が、『ヴァン.ゴッホ ~ 画家とその手紙』と題して特別エギゼビションを1月23日から4月18日まで開催することになりました。

ゴッホ展としては正に一生に一度出会うかどうかの貴重なもので、世界中の芸術愛好家の興味を惹くことは間違いありません。この特別展のために同美術館が企画したレクチャーや、トーク、ワークショップのチケットがオープニング前に売り切れてしまうほどですから。
では一年中、世界のどこかで開かれているゴッホ展とどこが違うかといいますと今回のエギジビションはタイトルからわかるように、絵画と同時に彼の手紙が展示されていることです。去年の秋にアムステルダムのヴァン.ゴッホ美術館から15年におよぶ研究の末ゴッホの819通の手紙が、「ヴァン.ゴッホ その手紙」という6巻の本になって出版されました。今回の王立美術館での展示はその本の中から40点の手紙が、65点の絵画、40点の素描とともに展示されています。
ゴッホは1000通ほどの手紙を残しています。中には友人であり画家のポール.ゴーギャンや妹に書かれたものもありますが、多くは精神的、経済的にゴッホの擁護者であった弟のテオに宛てたものです。それらはゴッホが絵画を描いている最中かまたは描きあげた直後のもので、その絵画のスケッチがついています。ですからこれらの手紙から私たちは、題材に関してや、絵画の中でゴッホが意図したこと、またゴッホの生や自然、宗教に対する思考や彼の精神状態など実に多くを知ることができるのです。
ゴッホといえば一般的には「ピストル自殺をした精神異常の画家」というイメージが強いことはたしかですが、このエギゼビションは、手紙を同時に紹介することによって、ゴッホが画家としてのみならず、手紙を書く分野においても優れた才能をもつ知的な芸術家であったことを納得させます。そして私たちをよりゴッホに近く導いてくれる役を果たしてくれているのです。ひとつひとつの作品についてこれほどまでに詳しい記録を残した画家は他にはいません。展示されている手紙の多くは一般公開されたことがないもの、保存のためにこれからもめったに公開されることがないものです。
ロンドンで、最後にゴッホに関する大展示会が行われたのは40年前といわれていますが、今回は、個人所有の作品のほか、ニューヨークのメトロポリタン美術館、ボストン美術館、ポール.ゲティ美術館など、世界中の80近くの美術館から借りた傑作を集めています。
展示会のために品を借りるということは、美術館の名声もさることながら展示会担当の学芸員の力量と忍耐、根性があってこそ実現するものです。もちろん彼らのゴッホに関する知識や、それまでの履歴、経験、そして芸術分野の世界的評判がものをいうことは言うまでもありません。今回の「ヴァン.ゴッホ 画家とその手紙」は、正に私たちには想像もつかない彼らの4年にわたる努力と忍耐の成果で、皆さんがもし、この展示会だけのためにロンドンにいらっしゃるとしても、決して裏切られることはないはず。
では、今回の「ヴァン.ゴッホ 画家とその手紙」の中からいくつかの作品をご紹介しましょう。
画家としての自画像
‘僕が自分の仕事の中でそれ以外の全てを合わせたものよりもずっと、ずっと情熱を持っているもの。それは肖像画なんだ。’
写真提供:Royal Academy of Arts
イエロー.ハウス
‘…….それはとても難しい問題だ。しかし、だからこそ僕はそれを克服したい。何故ならそれはものすごいものだから。太陽の光の中にあるイエロー.ハウス、そして他に比べるものがないくらいの青の新鮮さ….’
写真提供:Royal Academy of Arts
ゴーギャンのイス (ゴッホは、ゴッホのイスの絵と共に二人の画家の肖像画としている。)
‘最近のふたつの研究はちょっとおもしろいんだ。昼間の壁を背景に床の赤いタイルに置かれた木と麦わらで出来た黄色のイス(ゴッホのイスの絵)と、2冊の本とろうそくののったゴーギャンの赤とグリーン(夜の効果)の肘掛け椅子……..’
写真提供:Royal Academy of Arts
イトスギ その手紙
‘ひまわりを描いたようにこのイトスギをキャンバスに描きたいんだ。何故なら驚くことに、今まで誰も僕が見るのと同じ目でこれを見た画家はいないからだ。その線やプロポーションは、エジプトのオベリスクのように美しい。’
写真提供:Royal Academy of Arts